交通事故に遭い、骨折や神経損傷による麻痺・捻挫ないし脱臼などによって、上肢(肩・腕・ひじ・手首など)や手指に後遺障害が残存してしまうこともあります。

上肢の後遺障害については、①欠損障害、②機能障害、③変形障害の3つに分けることができ、手指の後遺障害については①欠損障害、②機能障害の2つに分けることができます。
上肢・手指の後遺障害については、下記の表のように細かく認定基準が定められています。

なお、骨折部にキュンチャーや金属釘を用いていて、それが機能障害の原因となっている場合には、これらの除去を待って等級の認定がなされることとされています。
他方で、これらが機能障害の原因とならない場合には、創面治癒をもって等級の認定がなされます。

機能障害については、下記の表通りの可動域制限が存在していても、MRIやCTなどの画像所見との整合性が認められない場合には、後遺障害等級認定が認められていませんので、注意が必要です。

1.上肢の後遺障害の認定基準について

1-1.上肢の欠損障害

等級認定基準
1級3号両上肢をひじ関節以上で失ったもの
(両上肢について以下のいずれかに該当する場合)

  1. 肩関節において、肩甲骨と上腕骨を離断
  2. 肩関節とひじ関節との間において上肢を切断
  3. ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨とを離断)
2級3号両上肢を手関節以上で失ったもの
(両上肢について以下のいずれかに該当する場合)

  1. ひじ関節と手関節の間において上肢を切断
  2. 手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断)
4級4号1上肢をひじ関節以上で失ったもの
5級4号1上肢を手関節以上で失ったもの

1-2.機能障害

等級認定基準
1級4号両上肢の用を全廃したもの
5級6号1上肢の用の全廃したもの
6級61上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8級6号1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
10級10号1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級6号1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

上記表中の言葉の意味については下記の通りになります。

「上肢の用を全廃したもの」とは

3大関節(肩関節・ひじ関節・手関節)のすべてが強直し、かつ、手指の全部の用を廃したものを言います。上腕神経叢の完全麻痺も含まれます。

「関節の用を廃したもの」とは

次のア~ウのいずれかに該当する場合を言います。
ア 関節が強直している
ただし、肩関節については、肩甲上腕関節が癒合し骨性強直していることがエックス線写真により確認できるものを含みます。
イ 関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にある場合
これに近い状態とは、他動では可動するけれど、自動運動では関節の可動域が健側の可動域角度の10%程度以下になった場合を言います。
ウ 人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されている場合

「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは

次のアかイのいずれかに該当する場合を言います。
ア 関節の可動域が健側(負傷していない側)の可動域角度の1/2以下に制限されている場合
イ 人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、㋐関節が強直している、または、㋑関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にある場合

「関節の機能に障害を残すもの」とは

関節の可動域が健側(負傷していない側)の可動域角度の3/4以下に制限されている場合を言います。

 

1-3.変形障害

等級認定基準
7級9号1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
(次のアまたはイに該当し、常に硬性補装具を必要とする場合を言います。)
ア 上腕骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残す場合
イ 橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残す場合)
8級8号1上肢に偽関節を残すもの
12級8号長管骨に変形を残すもの

2.手指の後遺障害の認定基準について

2-1.欠損障害

等級認定基準
3級5号両手の手指の全部を失ったもの

(母指は指節間関節、その他の手指は近位指節間関節以上を失った場合)

6級7号1手の5の手指又は母指を含み4の手指を失ったもの
7級6号1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指を失ったもの
8級3号1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指を失ったもの
9級8号1手の母指又は母指以外の2の手指を失ったもの
11級6号1手の示指、中指又は環指を失ったもの
12級の8の21手の小指を失ったもの
13級5号1手の母指の指骨の一部を失ったもの
(指骨の一部を失ったものとは、1指骨の一部を失っていることがエックス線写真などによって確認できる場合を言います。)
14級6号1手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの

 

2-2.機能障害

等級認定基準
4級6号両手の手指の全部の用を廃したもの
7級7号1手の5の手指又は母指を含み4の手指の用を廃したもの
8級4号1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指の用を廃したもの
9級9号1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指の用を廃したもの
10級6号1手の母指又は母指以外の2の手指の用を廃したもの
12級9号1手の示指、中指又は環指の用を廃したもの
13級4号1手の小指の用を廃したもの
14級7号1手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの

 

3.上肢の動揺関節・習慣性脱臼について

① 上肢の動揺関節については、他動的である場合と自動的である場合とにかかわらず、次の基準によって等級が認定されます。
ア 常に硬性補装具を必要とするものは、第10級に準ずる関節の機能障害として取り扱うことになっています。
イ 時々硬性補装具を必要とするものは、第12級に準ずる関節の機能障害として取り扱うことになっています。

② 習慣性脱臼は第12級に準ずる関節の機能障害として取り扱うことになっています。

 

4.骨の変形などについて

交通事故に遭い、体幹骨の変形が認められる場合には、後遺障害等級認定がなされます。

具体的には、裸体になった状態で、①鎖骨、②肩甲骨、③胸骨、④骨盤骨、⑤肋骨のいずれかに変形が認められ、この変形と整合するX-P画像が存在する場合には、後遺障害等級認定がなされます。

ところが、医師の多くが、この変形項目について記載漏れをしている場合が多いのです。
医師が、この項目に記載しない以上、自賠責の後遺障害の認定対象になることはありません。

当事務所に相談に来ていただき、診断書をみると、変形障害があるにも関わらず記載漏れがある方が多くおられます。
従いまして、変形障害を感じておられる方は、ぜひご相談下さい。

交通事故に遭い、ご自身やご家族の方が手や肩などに上記のような症状がある場合、後遺障害の等級認定を受けることができる可能性があります。

しかし、適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、個別に適切な対応方法を取らなければなりません。
まずは、後遺障害に詳しい弁護士にご相談されることをお勧め致します。