交通事故に遭い、骨折や神経損傷による麻痺・捻挫ないし脱臼などによって、下肢(股関節・膝関節・足関節)・足指などに後遺障害が残存してしまうこともあります。

下肢の後遺障害については、①欠損障害、②機能障害、③変形障害、④短縮障害の4つに分けることができ、
足指の後遺障害については①欠損障害、②機能障害の2つに分けることができます。

下肢・足指の後遺障害については、下記の表のように細かく認定基準が定められています。

なお、骨折部にキュンチャーや金属釘を用いていて、それが機能障害の原因となっている場合には、これらの除去を待って等級の認定がなされることとされています。
他方で、これらが機能障害の原因とならない場合には、創面治癒をもって等級の認定がなされます。

機能障害については、下記の表通りの可動域制限が存在していても、MRIやCTなどの画像所見との整合性が認められない場合には、後遺障害等級認定が認められていませんので、注意が必要です。

1.下肢(足)の後遺障害の認定基準について

1)欠損障害

等級認定基準
1級5号両下肢をひざ関節以上で失ったもの
2級4号両下肢を足関節以上で失ったもの
4級5号1下肢をひざ関節以上で失ったもの
4級7号両足をリスフラン関節以上で失ったもの
5級5号1下肢を足関節以上で失ったもの
7級8号1足をリスフラン関節以上で失ったもの

2)機能障害

等級認定基準
1級4号両下肢の用を全廃したもの
5級5号1下肢の用を全廃したもの
6級7号1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8級7号1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
10級10号1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級7号1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

上記表中の言葉の意味については下記の通りになります。

「下肢の用を全廃したもの」とは

3大関節(股関節・ひざ関節・足関節)のすべてが強直した場合を言います。
また、足指全部が強直した場合も含まれます。

「関節の用を廃したもの」とは

次のア~ウのいずれかに該当する場合を言います。
ア 関節が強直している
イ 関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にある場合
これに近い状態とは、他動では可動するけれど、自動運動では関節の可動域が健側の可動域角度の10%程度以下になった場合を言います。
ウ 人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されている場合

「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは

次のアかイのいずれかに該当する場合を言います。
ア 関節の可動域が健側(負傷していない側)の可動域角度の1/2以下に制限されている場合
イ 人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、㋐関節が強直している、または、㋑関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にある場合

「関節の機能に障害を残すもの」とは

関節の可動域が健側(負傷していない側)の可動域角度の3/4以下に制限されている場合を言います。

3)変形障害

等級認定基準
7級10号1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

(次のア~ウのいずれかに該当し、常に硬性補装具を必要とする場合を言います。

ア 大腿骨の骨幹部に癒合不全を残す場合

イ 脛骨および腓骨の両方の骨幹部などに癒合不全を残す場合

ウ 脛骨の骨幹部等に癒合不全を残す場合)

8級9号1下肢に偽関節を残すもの
12級8号長管骨に変形を残すもの

4)短縮障害

等級認定基準
8級5号1下肢を5㎝以上短縮したもの
8級相当1下肢が5㎝以上長くなったもの
10級8号1下肢を3㎝以上短縮したもの
10級相当1下肢が3㎝以上長くなったもの
13級8号1下肢を1㎝以上短縮したもの
13級相当1下肢が1㎝以上長くなったもの

下肢の短縮については、上前腸骨棘と下腿内果下端間の長さを健側の下肢と比較することによって判断されます。

 

2.足指の後遺障害の認定基準について

1)欠損障害

等級認定基準
5級8号両足の足指の全部を失ったもの

(中足指節関節から失った場合に全部を失ったと認定されます)

8級10号1足の足指の全部を失ったもの
9級14号1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
10級9号1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの
12級11号1足の第2の足指を失ったもの、

第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの

13級10号1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの

 

2)機能障害

等級認定基準
7級11号両足の足指の全部の用を廃したもの
9級15号1足の足指の全部の用を廃したもの
11級9号1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
12級12号1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
13級10号1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
14級8号1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの

 

3.下肢の動揺関節・習慣性脱臼について

① 下肢の動揺関節については、他動的である場合と自動的である場合とにかかわらず、次の基準によって等級が認定されます。
ア 常に硬性補装具を必要とするものは、第8級に準ずる関節の機能障害として取り扱うことになっています。
イ 時々硬性補装具を必要とするものは、第10級に準ずる関節の機能障害として取り扱うことになっています。
ウ 重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としないものは、第12級に準ずる関節の機能障害として取り扱うことになっています。

② 習慣性脱臼および弾発ひざは第12級に準ずる関節の機能障害として取り扱うことになっています。

交通事故に遭い、ご自身やご家族の方が足や足指などに上記のような症状がある場合、後遺障害の等級認定を受けることができる可能性があります。
しかし、適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、個別に適切な対応方法を取らなければなりません。
まずは、後遺障害に詳しい弁護士の在籍する当事務所にご相談されることをお勧め致します。