むち打ちには、14級や12級の後遺障害として等級認定を受けることができる状態のものがあります。
さらに初歩的な解説については、こちらをご覧ください。
2021.05.01
頚椎捻挫(むちうち)
むち打ちは、非該当か、14級9号又は12級13号のいずれかの等級で後遺障害として認定されることがほとんどです。 しかし、どのような...
2021.05.01
むち打ちはれっきとした後遺障害です!
14級や12級の後遺障害が認められる可能性も 交通事故に遭った際によくわずらってしまう後遺障害として「むち打ち」があります。 むち打ちは...
しかし、14級や12級の後遺障害として認定されるためには、適切なポイントを押さえた上で対応しなければ、後遺障害の等級認定を得ることは難しいといえます。
以下では、むち打ちにおける後遺障害等級を受けるための6つのポイントについて説明します。
- 事故態様(発生状況)
- 通院の頻度、継続性
- 症状の一貫性、連続性
- 症状の重篤性、常時性
- MRIの画像診断
- 神経学的診断
1. 事故態様(発生状況)
被害者が遭遇してしまった交通事故が、後遺障害を発症するほどの交通事故であったかどうかという観点から必要なポイントです。
例えば、停車中、後方車両がクリープ減少等のごく低速度で追突した場合等の軽微な事故の場合は、被害者の受ける衝撃も軽微であると考えられます。
そのため、交通事故による症状も軽微であるはずだと考えられてしまう可能性があります。
また、事故態様は、病院で治療を受けるうえでも重要な情報ですので、主治医の先生にもきちんと伝えておく必要があります。
2. 通院の頻度、継続性
交通事故に遭ってから症状固定までの間、「どのぐらいの頻度で通院したか」、「通院を継続したか」という点は、後遺障害が発症するほどの治療が必要な状態であったのかという観点から必要なポイントです。
通院の頻度が少ない場合や通院に継続性が認められない場合、後遺障害として認定されない可能性があります。
また、通院は、むち打ちの症状を「治療」するためのものである必要がありますので、整形外科などの医療機関で、むち打ちの治療を受けたことが必要です。
なお、接骨院や整体院等への通院は、後遺障害の認定上は、重要視されていません。
確かに、「頭痛や痺れなどはあるけれど、仕事があるので病院には行けない」「医師から処方される湿布よりも施術を受けた方が痛みが取れる」という事情をお持ちの被害者の方の心情もよく理解できます。
しかし、後遺障害の審査にあたって、このような被害者の方の主張は、全く考慮してもらえないのです。
適切な治療や賠償を受けるためにもでき得る限り、整形外科などの医療機関に通院しておく方が良いでしょう。
3. 症状の一貫性、連続性
交通事故に遭ってから症状固定までの間、症状が一貫、連続しているかという観点からのポイントです。
一般的に、交通事故等の外傷によるむち打ちの症状は、交通事故後早期に強く発症し、時の経過とともに損傷部位が回復して、徐々に症状が軽減していくと考えられています。
そのため、当初の診断にはなかった傷病が治療期間中に現れたり、いったん消えた痛みが後に再度現れたりしたような場合には、事故によって発症したものとはいえないと判断されるおそれがあります。
むち打ちが後遺障害として認められるためには、交通事故後早期にむち打ちの症状を訴えていて、かつ、それが治療終了(症状固定)時点まで継続していること、そして、それが医師作成の診断書・カルテに記載されていることが必要です。
4. 症状の重篤性、常時性
後遺症と呼べる程度に重篤なものであるか、常に症状があるかという観点からのポイントです。
例えば、雨の日や寒い日だけ痛みが出るような場合には、後遺症と認められない可能性があります。
病院に通院した際には、「雨が降ると痛い」と言うのではなく、「雨が降ると、普段より痛みが強くなる」というように交通事故に遭った症状について正確かつ適切に説明しなければなりません。
5. MRIなどの画像診断
むち打ち症状が画像などの他覚所見により裏付けられているのかどうかという観点からのポイントです。
医師は、患者からむち打ちの症状を訴えられた場合、症状の原因究明のために、MRI等の画像による診断を行うのが一般的です。
そのため、交通事故後早期にMRIなどの画像診断を受けていない場合、むち打ちの症状について治療を望むほどの訴えがなかったものと判断され、後遺障害の認定が得られにくくなることがあります。
なお、全てのむち打ちの後遺障害の認定にあたって、MRIなどの画像所見が必要であるという意味ではありません。
後遺障害12級13号の認定を得るためには、MRI画像などの他覚所見が必要ですが、14級9号では他覚所見は必ずしも必要とされないからです。
6. 神経学的診断
むち打ちの症状が神経学的に裏付けられているかどうかという観点からのポイントです。
医師は、むち打ち(神経根障害)を疑った場合、一般的に、腱反射テスト、スパーリングテスト、ジャクソンテストなどの神経学的検査を行います。
このようなテストが行われていない場合、むち打ち(神経根障害)の疑いがなかったものと判断され、後遺障害の認定が得られにくくなります。
もっとも、全てのむち打ちの後遺障害の認定において、他覚所見である神経学的検査が必要でありません。
後遺障害14級9号では他覚所見は必ずしも必要とされないからです。